
私は印刷会社も経営している関係上、イラストレーター(Adobe Illustrator)で制作された印刷用の入稿データを目にすることがあります。
イラストレーターの場合、入稿トラブルがいくつか想定できるのですが、その中の1つとして、バージョンの違いがあります。今回、ある事例で発見した問題と解決策をご紹介します。
イラストレーターのCCバージョンのファイルをCS6で開いてはいけない:AIの使い方とデータ入稿の注意点

ご紹介するのは、イラストレーターCCとCS6の間で起きた問題です。
今回の件は、通常、発生しない問題だと思います。ただし、データを取り扱う印刷会社次第では、発生し得る問題ですので、念のための注意事項としてお伝えします。
■問題点
イラストレーターのCCバージョンのファイルをCS6で開くと、アートボードのサイズが変わる?
■解決策
トラブルを防ぐために、入稿時にチェックすべき3つの項目
イラストレーターのCCバージョンのファイルをCS6で開くと、アートボードのサイズが変わる?

イラストレーターの新しいバージョンで作ったデータを、古いバージョンで開こうとすると、アラートが表示されます。
通常は、ここで開くのを止め、新しいバージョンで開き直します。(もしくは、ダウングレードをお客様にお願いします。)
今回は、あえて古いバージョンで開いてみます。そうすると、重大な問題が発生します。何と、イラストレーターが勝手に解釈し、中のオブジェクトに合わせてアートボードのサイズを変更してしまいます。
こちらが、イラストレーターCCで開いた正しい状態です。

□アートボード(仕上がり)サイズ:54mm×54mm
□オブジェクト(3mmの塗り足し有り)サイズ:60mm×60mm
こちらを、イラストレーターCS6で開いてしまうと、このようになります。

□アートボード サイズ:60mm×60mm
□オブジェクト サイズ:60mm×60mm
この時点で、「仕上がりサイズが54mm×54mmなのに、おかしい!」となるわけです。
そもそも、アラートが出ているのに、開いてしまうのが問題で、普通はこのような事は発生しません。しかし、この問題の発見をきっかけに、改めて、印刷データを入稿する際の注意点の大切さを認識しました。むしろ、そちらが本当に大切なことです。
データを制作し、入稿する段階で、行わなければいけないことがあります。
トラブルを防ぐために、入稿時にチェックすべき3つの項目

印刷物のデータを入稿する際に、チェックすべき3つの項目があります。
1:制作したアプリケーションの名称とバージョンを確認する
2:トンボ(トリムマーク)を作成する
3:仕上がり(完成状態)が分かる確認用のPDFか画像を添付する
この3つの項目は、今回のバージョン問題に関係無く、印刷データの入稿時に、印刷会社と情報を共有する必要があります。それにより、トラブルを未然に防ぐことができます。
最後に:販促ツール作りで失敗しないため、入稿は慎重に
印刷物はWebサイトと違い、完成後に修正ができないため、印刷してからでは取り返しがつきません。
万一、当初の完成イメージと異なる形で、印刷物が出来上がってしまっては、販促ツールの効果にも影響を及ぼしかねません。また、再度作り直しとなれば、費用やスケジュールの問題で時間が割かれ、本来注力すべき部分が疎かになり、プロモーション全体の問題にまで発展する可能性も十分に考えられます。
非常に細かく、面倒かもしれませんが、チェック項目を確実にクリアすることで、きちんとした販促ツールを制作し、運用・検証を行うことができます。ご入稿時は、印刷会社と共に、是非慎重にデータを確認して下さい。